自動車は重量の約70%を鉄が占めており、エンジンやボディ、サスペンションなど、さまざまなところで高機能な鉄が多く使用されています。ハイブリッドカー向けの高効率電磁鋼板と呼ばれる鋼材や重要保安部品である自動車の足回り商品の開発、さらには自動車・部品メーカーへのソリューション提案など、鉄はさまざまな角度から自動車の進化に貢献しています。

ボディには薄くて強い高張力鋼板(ハイテン)と呼ばれる鋼材が使用されています。車体の軽量化と衝突安全性を両立する鋼材の利用で、自動車の燃費向上、環境負荷低減にも貢献しています。

タイヤには、「スチールコード」という髪の毛3本ほどの太さのワイヤが入っており。タイヤ寿命の向上や、自動車に高い走行性と操縦安定性を与えています。また、タイヤの軽量化および鋼材の使用量の低減を目的として徐々に高強度化が進み、スチールコードは、現在実用化されている鋼材のなかで、最高強度の4,000MPa を有しています。

走る、曲がる、止まるといった、自動車の基本性能を支えるエンジンには、ピストンの上下運動を回転運動に変えるクランクシャフトや吸排気を調整する弁ばねなど、多くの特殊鋼が活用されています。

エネルギー・造船向けの鋼材には、多様な使用条件下で長期に安全性を担保する品質が求められます。特に、近年需要が増加している資源・エネルギー分野では、石油・天然ガスの採掘、輸送、精製、貯蔵など、大荷重・高圧・極低温などの過酷な環境下に対応できる高性能な鉄がその安定供給を支えています。発電設備やガス・石油の精製プラントなど、鉄なくしては、エネルギー産業は成り立ちません。また、造船産業においては、強度や靭性だけでなく、溶接部の特性や疲労強度、耐食性、衝突安全性など、輸送の安全を守る高度な特性が必要とされています。

近年の油田・ガス田開発では、地下6,000mを超える大深度の開発など、過酷な開発環境に耐えうる高性能な掘削用の鋼管が必要とされています。高温・高圧に耐え、耐食性も備えた新日鐵住金の世界最高強度のシームレスパイプが、これまで採掘不可能であった大深度ガス田の開発を可能にしました。また、ガス田から消費地までの長い輸送距離を運ぶパイプラインにも高強度の鋼管が使われており、北アフリカから南欧スペインへ天然ガスを輸送する世界最深級の海底パイプラインでは、高圧・極低温に耐える深海用UO鋼管が天然ガスの安定供給に大きな役目を果たしています。

90年代、原油タンカーの原油漏れによる海洋汚染リスクが国際的な課題となりました。世界的にエネルギー需要が高まる現在においては、環境負荷の低減と資源の安定供給の実現が不可欠です。新日鐵住金が開発した従来の5倍の耐食性を持つ船舶用の鋼板は、超大型原油タンカーに適用され、資源の安定供給とともに、地球環境への貢献に寄与しています。

天然ガスは-162℃まで液化することで体積を減らし、タンクに詰められて船で輸送されたり、貯蔵されたりします。そのため、輸送や貯蔵に使用されるLNGタンク鋼板には、極低温にも耐えられる性能が求められています。

産業施設、高層ビル、集合住宅から、長大吊橋や海底トンネル等のインフラ整備まで、あらゆる分野で鉄が活用されています。建築(建築物の柱・梁材)、土木(道路・鉄道、河川・港湾、建築基礎など)の分野では一つとして同じ現場はなく、多種多様なニーズがあるため、独自性を発揮した建材商品を継続的に開発・供給することが求められます。また、長期での使用を前提に、強度はもちろん、地震や火災時の耐久性なども重要視され、社会に欠かせないインフラとして、人々の安心・便利な暮らしのため、日々鉄鋼材料も進化を遂げています。

近年の建築物の大型化や高層化は、見えない技術で支えられています。新日鐵住金が開発した世界最高強度の建築構造用高張力鋼材は、建物の耐震性を従来よりもさらに向上させるとともに、鋼材の薄肉化・軽量化で鋼材使用量の削減効果ももたらします。また、構造物の柱の本数を少なく、細くすることが可能であり、意匠性と快適性を両立した大スパンの空間を実現することができるなど、より安全で快適な空間づくりに貢献しています。

土木・建設の工事現場では、凹凸状に加工した鋼板を繋ぎ合せて鉄の壁を作り、土留めとして多くの鋼板が活用されています。土中に打ち込む際の圧力や腐食への耐性等の構造信頼性、施工性の良さや経済性が求められます。

メインケーブルが命と言われる吊橋。世界最長の吊り橋である明石海峡大橋には、この橋のために当社が開発した引張に強い高張力鋼が使われています。めっき鋼線と呼ばれるこの鋼材は、直径5mmの亜鉛鋼線を何万本も束ねて直径100mmの太いケーブルにしたもので、強靭なパワーで橋を支えています。震源地が明石海峡の直下であった阪神・淡路大震災の激震をも見事に耐え抜き、地震対策の面でもその技術が世界トップクラスであることを証明しています。

年間約230億人の人々を輸送する鉄道は、その名の通り鉄が主役の交通機関です。車体・車輪・車軸、そしてレールまで、鉄が重要な役割を果たしています。新日鐵住金が国内シェア100%を誇る高速鉄道車両用の輪軸(車輪・車軸・ブレーキディスク・駆動装置・継手)はもちろん、鉄道車両専用のステンレス材や、セグメント(地下鉄、トンネルの壁を覆う部材)、鉄道の運行・輸送計画業務を更に高度化するためのITソリューションなど、長年蓄積した技術力と高い信頼性で、さまざまな側面から世界各国での輸送を支えています。

一般旅客用を始め、高速鉄道用、重荷重鉄道用など、目的にあったさまざまなサイズや材質が開発・製造され活用されています。また、安全性を第一条件とするため、厳格に規定されている製造法や形状、寸法などに対応した製品が求められています。

鉄道車両用台車では、安全性や乗り心地、快適性が徹底して追求されます。地下鉄内の騒音や摩耗を抑える操舵台車、速度300km/hで走行する新幹線には、動揺防止や車体傾斜を制御する台車が使われ、それぞれのシーンで求められる様々なニーズを反映した最適な台車設計、製造を行っています。

鉄道の車輪は車体とレールの唯一の接点で、数十トンもの重量を僅かな面積で支えなければなりません。いわば、鉄道車両にとって最も重要な部品と言えます。 新日鐵住金の高速鉄道や鉱山鉄道などに使われる大荷重でも耐えられる車輪は、米国鉄道協会の定める高荷重貨車用車輪の厳しい規格要求にも応える品質を担保し、米国の物流輸送を支える貨物列車にも多く採用されています。

電器・家電製品の種類は、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、自動販売機、OA機器など多岐にわたり、さまざまな種類の鋼材が活用されています。鉄は、豊富で安価な材料であることに加え、その強度、加工性から家電製品に多く採用されてきましたが、現在では寿命延長のための耐食性向上や外観の改善を目的に表面処理を施した鋼材の使用が増えてきています。また、環境保護の観点から電化製品におけるモーターの高効率化が求められるなか、広範囲の用途に対応した電磁鋼板と呼ばれる機能性鋼材を供給することで、モーターの高効率化に寄与し、省エネルギーに貢献しています。

最新の白物家電では、内部部品における磁気特性、汚れの軽減などの機能性、落ち着いた外観を求める意匠性などの性能が求められています。環境にやさしくより便利に、日々進化を遂げる製品の進化を支えているもののひとつに、電磁鋼板と呼ばれる鉄鋼材料があります。電磁鋼板とは、磁石につく鉄の特性(磁性)を活かした機能材料であり、発電機、変圧器、エアコンや冷蔵庫まで身近にある電化製品のほとんどに使われている電気⇔磁気を変換するモータの鉄心材料として欠かすことができません。目には見えないところで、電気機器のエネルギー効率を上げる大切な役割を担っています。

薄型テレビの筐体には、内部から発生する磁気をシールドし、テレビ内部で発生する熱を外に逃がすことが求められます。さらには、製造過程において大きなパネルを一枚の鉄板からプレスで製造するという加工性も求められています。美しい外観と高耐食性で、薄型テレビのバックカバーなどに使われている電気亜鉛メッキ鋼板は、極限まで薄くした塗装厚みと加工成形性の両立を実現し、生産工程数の削減や塗膜の薄膜化などによりCO2削減にも貢献しています。

容器用材料としての鉄は、約200年前フランスで缶詰が考案されて以来、内容物を長期保存したり、輸送性を向上させるなど人類の生活の中で極めて重要な役割を果たしてきました。生活に最も身近な飲料缶の場合は、消費サイクルが短く、極端に言えば消費者にとっての寿命は自動販売機からごみ箱までといった商品でもあり、長期保存や物流に耐える強度を保つことに加え、リサイクル性が高いことが特徴です。

1955年に登場したオレンジジュース缶を皮切りに、果汁飲料、炭酸飲料、コーヒー、ビールなど、さまざまな飲料にスチール缶が活用されています。商品として意匠性も必要とされることから、加工性も要求されます。国内においては、食缶用途は非常に少なく飲料缶用途が主体であり、なかでも、内圧に耐える強度と高温殺菌が必要なコーヒー飲料では、安全性の観点から現在も高いシェアを誇っています。スチール缶は、飲料市場において厳しい強度要求に唯一対応できる不可欠な容器です。

日本では保存食というイメージの強い缶詰ですが、世界各地では様々な種類の缶詰が作られており、その種類は1,200以上と言われています。その理由の一つとして、缶詰は中味を密封し真空で加熱殺菌するため、殺菌剤や保存料が使われておらず、衛生的で安心・安全であることがあげられます。缶詰は、殺菌するために製造過程で大きな圧力を加える必要があり、缶にはかなりの強度が求められます。ブリキで作られた缶は、他の容器と比べて強度が高く、輸送時の扱い易さや缶詰の品質を長期にわたり保つことを可能にしています。

容器用素材としては、電池の外装缶として使用される鋼材(ニッケルめっき鋼板)があります。電池缶は規格により外装寸法が規制されているため、鋼材の薄肉化をはかることによって、その内容量をアップすることができ、電池メーカーの高性能化ニーズにこたえていくことができるとされています。