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ユーザーボイス

株式会社スノーピーク
山井 太

人と自然をつなぐアイテム
チタンマグカップ

株式会社スノーピーク
代表取締役社長
山井 太(Tohru Yamai)

本当に欲しいものを自分でつくる


©スノーピーク

 私は今でも年に45泊から60泊くらいキャンプをしています。キャンプのコアバリューは人間性の回復にあります。アウトドア市場は先進国にしかありません。行き過ぎた文明社会に生きる私たちは、癒されなければならないストレスを抱えています。

 そこで1986年、車でキャンプに出かけるオートキャンプというアウトドアスタイルを提案しました。それまでキャンプはバックパッカーやヒッチハイカーのような、安く済ませる若者たちの旅行手段というイメージがありました。しかしドームテントとタープという幕体の下にシステムデザイン化されたキッチンでキャンプをする。アウトドアをライフスタイルと捉え直し、キャンプシーンを家族の絆を深め、自然の中で楽しい時間を過ごして癒されるための豊かな時間へと変えました。

ハイエンドな"とんがった"イメージ


チタンマグカップ ©スノーピーク

 創業者である私の父は、谷川岳をこよなく愛した登山家でした。当時の道具に満足できず、オリジナルの登山用品を開発しました。本当に欲しいものを自分でつくるという志は、当社のものづくりに息づいています。

 当社がチタンのマグカップをつくった理由は2つあります。1つはチタンという素材が軽くて、さびない。プロダクトとして非常に優れているからです。もう1つは当社が世界進出した時期と重なります。ブランドとしてハイエンドな"とんがった"イメージをつくりたかったからです。当社は地元の燕三条に培われたものづくりの技術を、自分たちがプラットフォームとなってライフスタイルに変換し、グローバルに情報発信する看板商品の1つとして、チタンのマグカップを展開した経緯がありました。

 当社マグカップには、"titanium JAPAN"と刻印しています。それは世界で最も厳しい品質を求めるアウトドアメーカーである当社に選ばれる素材を、新日鉄住金が供給していることへの尊敬の念と、日本のものづくりへの誇りを表わしています。

 昨年、チタンの酒筒とお猪口を新たに開発しました。地元新潟の端麗辛口の日本酒を冷やで楽しんでほしいという思いを込めました。ニューヨークの当社直営店に、酒筒と日本酒をディスプレーしています。チタンはハイエンドな"とんがった"当社ブランドイメージを発信する役割を今も担っています。

人間らしさを取り戻す新提案


チタンマグカップは燕三条で培われた金属加工の技術力で深絞りを実現している

 お客様とのコミュニケーションを通じて、お客様のライフスタイルと潜在的なニーズがどこにあるのかを感じ取ることを大切にしています。そして自分たちもユーザーとして本当に欲しいものをつくることによって、お客様の想像を越える製品が生まれると考えています。ほかにはないものづくりから生まれた製品を使う人たちが、自然に深く包まれることで人間らしさを取り戻すこと、その喜びを知る人を一人でも多く増やすことを使命に、新製品開発に取り組んでいます。当社はチタンなどを使って製品をつくり、新たな価値を創造する製造業ですから、新しい素材ができることはうれしいことです。新日鉄住金の材料開発に期待を寄せています。

今後の抱負

 日本のオートキャンプ人口は約800万人と言われています。日々のストレスから解放され、人間性を回復できている人たちは全体の6%に過ぎません。そこで「半ソト空間」というプランをマンションデベロッパーと共同開発しました。半ソト空間とは、住まいという日常の「ウチ」に、アウトドアライフという非日常の「ソト」を取り込むというアーバンアウトドアの提案です。マンション1階住戸のテラスから専用庭にかけて当社がデザインした専用幕体を設置し、そこで食べたり、くつろいだり、寝たりできる当社アウトドア製品を組み合わせることで、心地よい自然指向な暮らしが日常で楽しめる空間をつくりました。当社が介在することでマンション1階住戸の不動産価値も高めました。企業には社会的な存在理由が求められます。アウトドアのフィールドを越え、いろいろ業界とバリューアップできるコラボをして、多くの人たちの人間性の回復に貢献していきたいと考えています。