トップメッセージ



つくる力を鍛え、メガトレンドを捉え、鉄を極める


社長の進藤孝生です。

今、社会と産業は、長期的かつ構造的な、大きな変化の波に直面しています。そして、それに伴い、鉄鋼業も新たな進化に向けた転換点に立っていると私たちは感じています。各国における保護主義化の動きや、新興国における鉄鋼の自国生産化の動きは、鉄鋼の需給構造に変化を及ぼすことが想定されます。また、AIなど高度ITの急速な進歩、EV等新エネルギー車開発の動き、それに伴う自動車メーカーの一層の車体軽量化や高強度化ニーズの高まり、自動運転の普及、シェアリングエコノミーの広がりなど、私たちが深くかかわる需要業界や社会そのものが大きく変化し、鉄鋼の市場構造にも影響を及ぼしていくことが予想されます。さらに、持続可能な開発目標(SDGs)が国連で採択され、パリ協定が発効するなど、サステナブルな社会の実現に対する企業の貢献も、ますます期待されています。

このような流れの中にあっても変わらないもの、それは、鉄が、他の素材には替え難い基礎素材としての優れた特性を有するということ、そして、それ故に、経済の発展とともに社会インフラが整備され、世界のすべての人々が格差なく豊かさを享受できるようになるために、鉄はこれからも社会から求められる存在であるということです。
鉄鋼業はこれからも、成長産業であり続けます。その中で、徹底的につくる力を鍛えること、メガトレンドを捉え、変わることと変わらないことをしっかりと見極めること、そして、こうした取り組みを通じ、着実に収益を上げて企業として力強く成長しながら、鉄を極め、鉄で社会に貢献していくこと、これが私たちの目指すところです。その実現に向けて、今、私たちが考えていることをお伝えしたいと思います。

基本戦略と5つの施策について


新日鉄住金は、私たちの技術の力をベースに、世界に広がる製造拠点で最適生産体制を構築し、商品競争力とコスト競争力で、グローバルに事業を拡大させていくことを目指しています。この「技術」「コスト」「グローバル」をキーワードに、今後も成長が期待できる「自動車」「資源エネルギー」「インフラ」の戦略3分野の高級鋼マーケットを中心に、収益の拡大を目指しています。この基本戦略の下、2018年3月に2020年度を最終年度とする新しい中期経営計画を発表しました。その計画の柱となるのは、「社会・産業の変化に対応した素材とソリューションの提供」、「国内マザーミルの『つくる力』の継続強化」、「鉄鋼製造プロセスへの高度 IT の実装」、「グローバル事業展開の強化・拡大」、「持続可能な社会の実現への貢献(SDGs)」の5つの施策です。

素材とソリューションの提供、つくる力の継続強化、そして高度 IT の実装について


社会や産業の変化と共に、お客様が素材に求めるものも年々高度化しています。例えば自動車分野であれば、強度や加工性を備えたより軽量な鋼材、資源エネルギー分野であれば、より過酷な使用環境に耐える耐腐食・耐高温・耐高圧な性質を備えた優れた鋼材、インフラ分野であれば、新興国においてインフラの都市化・大規模化が進行する中、強度や安全性はもちろん短工期での施工が可能な鋼材など、更なる付加価値が求められています。私たちは、こうした要望に応えるべく、技術開発を強化し、鉄の素材としての機能を最大限に引き出すとともに、競合他社との一層の差別化を図るため、難加工素材の使用技術やお客様での施工効率向上に資する技術など、素材を使いこなすためのソリューション技術の深化にも力を入れてまいります。

そして、これらのハイエンドな製品を生み出す国内マザーミルの「つくる力」を一層強化していくため、新鋭設備導入や既存設備のリフレッシュ、技術・技能伝承の着実な推進など、設備と人のさらなる強化を実施します。
近年の事業運営において、最先端のITの活用が、企業の競争力を左右する重要な要素となっています。当社は、システムソリューション事業を担うグループ企業を有していますが、社内にも高度IT活用に向けた新組織を発足させました。グループ連携を通じて総合力を発揮し、IoT、ビッグデータ、AIを積極活用した、安全かつ競争力のある製造現場、安定生産、品質の向上、業務の高度化等に取り組みます。また、国内外の各製造拠点間の業務プロセスと業務システムの連動を更に強化し、これに高度ITを組み合わせることで、一体的かつ効率的な業務遂行を実現し、究極的には仮想ワンミルと言うべき姿を目指します。

私たちは、これらの実行のために、今後3ヵ年の設備投資に約1兆7,000億円、研究開発に約2,200億円を投入してまいります。つくる力、即ち生産の基盤を盤石なものにすることで、私たちにしかできないハイエンドな製品・ソリューションを安定的にお客様にお届けするとともに、更なるコスト競争力の強化を目指します。短期的には、大きなキャッシュアウトと償却負担を伴いますが、将来にわたる果実を勝ち取るために、必要かつ重要なステップであると考えます。

グローバル事業展開の強化・拡大について

鉄鋼他社に先駆けて進めてきた下工程のグローバル展開は、2012年の新日本製鉄と住友金属の統合時に900万トン/年だった海外生産能力が現在2,100万トン/年と着実に拡大し、収益面でも貢献度を高めています。今後も海外の鉄鋼需要は長期的に着実な増加が見込めることから、2020年度までの3ヵ年で、約6,000億円の事業投資枠を設定し、アジア、北米、中南米などで、自動車、資源エネルギー、インフラの戦略3分野を中心に、将来の成長に資する案件を見極め、積極的に投資を進めてまいります。保護主義の拡大や、鉄鋼の自国生産化の傾向に備え、従来は国内マザーミルと海外下工程の分業体制としていたビジネスモデルに、一部海外需要地域において、鉄源から製品までの一貫生産拠点をグループ内に取り込むことを検討しています。2018年3月には、アルセロール・ミッタル社との間で銑鋼一貫製鉄所を有する印エッサール・スチール社を共同で買収するための基本条件について合意し、具体的な手続きを開始しました。

持続可能な社会の実現への貢献(SDGs)について

このように日々事業に取り組み、収益を上げ、持続的に成長すると共に、社会から信頼され、社会に貢献する企業となることが、私たちが最終的に目指す目標であります。まずは、安全・防災を何よりも最優先に考え、過去に発生した事故・トラブルを教訓に、リスクの適切な管理と未然防止に徹底的に取り組んでいます。そして法令を遵守し、財務報告の信頼性と業務の有効性・効率性を確保するため、内部統制システムの継続的改善に努めています。さらに、人権を尊重し、国籍や性別に関係なく、多様な人材が持てる力を最大限発揮できる企業を目指して、仕事の標準化・効率化と高度ITの活用による業務運営の刷新、働き方改革に取り組んでまいります。

SDGsの17の目標にも数多く盛り込まれている地球環境問題については、当社としても企業経営の根幹をなす重要課題と位置づけています。日本は、先に発効したパリ協定を踏まえ、CO2排出量を2030年に2013年比で26%減とする目標を掲げ、また、長期的に目指すべき目標を、2050年における80%減としています。これに対して、当社は、製造段階における環境負荷の軽減(エコプロセス)、使用段階における環境負荷の少ない製品の開発(エコプロダクツ(r))そして、私たちが培った最先端の環境技術を提供することによる世界規模での環境負荷の低減(エコソリューション)という「3つのエコ」で貢献することを目指しています。

製造時におけるCO2排出を大幅に低減させる試みとして、水素還元プロセスと、高炉ガスからのCO2の分離・回収という、極めてチャレンジングな革新的技術の研究を行っています※。当社君津製鉄所構内にある試験高炉(12m3)で検証した結果、2017年度には、試験高炉規模でこれら技術の目途がたち、実用化に向けて大きな前進を遂げました。2030年頃までに技術を確立し、経済合理性が成立することを前提に、2050年までの実用化を目指しています。

※国内鉄鋼他社と共同ですすめている国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の開発プロジェクト(環境調和型プロセス技術の開発/水素還元等プロセス技術の開発)


2017中期経営計画の振り返り、2020中期経営計画の目標とその実現にむけて


2017中期経営計画の最終年度となった2017年度の連結業績は、売上高5兆6,686億円、経常利益2,975億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,950億円と、前期に比べ増収増益を達成し回復傾向となりました。2017中期経営計画のKPIについては、コスト改善は1,500億円と目標を達成し、3ヵ年で2,000億円を目標とした資産圧縮についても、3,000億円と大幅な超過達成を実現しました。財務体質の健全性を示すD/Eレシオは、0.5を目標としていましたが、営業キャッシュフローの減少や、日新製鋼の子会社化等に伴い、0.66への改善にとどまりました。一方で、ROS、ROEについては、それぞれ5.2%、6.4%と、誠に遺憾ながらともに目標の10%に対し未達となりました。

計画が未達となった背景として、過去3ヵ年の計画実行時期に顕在化した、中国の過剰生産・過剰輸出に伴う鋼材市況の悪化、油価低迷に伴うエネルギー向け高付加価値鋼材所要の減少、石炭価格の高騰、市況原料や物流費等のコストアップといった外的要因とともに、生産トラブルによる減産という大きな内的要因もありました。しかしながら、このような状況は、現在改善へと向かっています。外的要因のうち、海外鋼材市況については、中国政府が過剰生産能力削減に向けて大きく舵を切ったことで回復してきました。また、石炭価格の高騰に対しても、鋼材価格への転嫁を着実に進めてきました。エネルギー向け鋼材は、厳しい環境下でも収益を確保できるよう体質の改善を進めていますが、油価は最悪期を脱し回復の兆しが見え始めています。生産トラブルについても、生産基盤の再構築と発生原因となった工程の改善を進めるのはもちろん、品質要求の高度化に伴う操業条件の変化にも柔軟に対応できるよう、全社の英知を結集し、安定生産の実現と能力のフル発揮に取り組んでいます。さらに、経営統合以降、拡大してきた海外事業については、収益への貢献が進み、私たちのグローバル戦略は、順調な歩みを進めています。

このような中、私たちは、2020中期経営計画において、必ず達成するという不退転の決意のもと、ROS10%、ROE10%という目標に再び挑戦いたします。これをより確実なものとするために、「売る力」の向上に精一杯取り組んでまいります。市況原料や物流費等のコスト変動を鋼材価格に反映していくとともに、私たちがこれからも世界最高水準の品質の鋼材をお客様に提供していくために、再生産可能な価格水準の確保が必要です。これからも、私たちの鋼材を長くご愛顧いただいているお客様の製品の付加価値向上に貢献し、お客様とともに成長し続けるために、協力・信頼関係を大切にし、更なる高品質製品の開発に努めながら、目標達成への取り組みを進めます。

配当について

2017年度の年間配当金につきましては、連結配当性向31.7%、1株につき70円とさせていただきました。2018年度からは、業績に応じた利益の配分の指標として、従来の「連結配当性向年間 20%~30%を目安」から「同年間30%程度を目安」といたします。

鉄を極め、社会に貢献します。


地球は、その1/3が鉄から構成されている「鉄の惑星」です。資源埋蔵量が潤沢であること、高強度かつ安価であること、そして、圧倒的なリサイクル性を有し、製造時もLCA(ライフサイクルアセスメント)※の観点からも環境負荷が低いことなど、鉄は非常に優れた素材です。それは、社会で利用されている金属製品の約9割が鉄である事実からもうかがい知ることができます。
※LCA(ライフサイクルアセスメント):製品をつくる、使う、捨てるあるいはリサイクルするまでの全ての段階を通して、環境にどのような影響を与えるのかを評価すること

また、少ない元素添加でも熱処理により様々な特性を付加することができるなど、ユーザーのニーズによりきめ細かく応えることができるという、他の素材には替え難い、極めて優れた特徴を有した素材であると言えます。一方で、それは、作る側の力量次第で、素材の可能性が大きく左右されることも意味しています。
あらゆる産業・インフラ構築のために必要不可欠な基礎素材である鉄の可能性を更に極め、その力を引き出すこと、そして、引き出された鉄の力を社会に還元し、世界中の人々が豊かさを享受できる社会の実現に貢献すること、これが鉄づくりにかかわる、私たちの使命であると考えています。

私たちは、2019年4月に商号を変更し、日本製鉄株式会社として新たなスタートを切ります。2012年の新日鉄と住友金属の経営統合後、日新製鋼が当社グループの一員となり、現在は山陽特殊製鋼の子会社化を検討しています。今回の商号変更は、私たちが、こうしたさまざまな企業のDNAを包み込む日本発祥の製鉄会社として、グローバルな競争時代を勝ち抜いていくという強い意思を具現化したものです。私たちはその誇りを胸に「常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献する」という企業理念の実現に向け、世界を舞台にこれからも日々努力してまいります。

新日鉄住金株式会社
代表取締役社長 進藤 孝生



このページの上部へ

ここからフッター情報です