第三者からのご意見

ジャーナリスト・環境カウンセラー  崎田裕子氏

環境経営の全体から

国内は超高齢化・人口減少社会に突入していますが、世界的には人口増加が続いており、環境・経済・社会の多様な視点を踏まえた持続可能な社会構築が喫緊の課題となっています。国連サミットで2015年に採択された「持続可能な開発目標」SDGsには、2030年に先進国も途上国も世界が連携して達成すべき17目標169ターゲットが示されており、各国の政策形成、企業経営、地域計画づくり等の現場に大きな示唆を与えています。

トップメッセージでも強調しておられますが、地球環境の将来につながる目標は多く、鉄鋼事業を中核とする企業グループとして「環境」配慮重視を明確にし、「環境経営」を貫く姿勢は大変力強いものと評価させていただきます。

なお、2016年度の地域別売上高構成比は64%が国内ですが、36%は海外であり、世界への貢献は重要な使命と考えます。自社の取組みをSDGs17目標に対応して分類し、世界標準での透明性を確保し、状況の明示に取り組まれた意欲も素晴らしいと存じます。貢献内容を継続的にウォッチし、成果や課題を社会に共有いただくことを願っています。

環境経営の具体策について

地球温暖化対策としてこれまでも3つのエコを重視し、資源・エネルギー効率の高い①エコプロセスで、②エコプロダクツ®を生産してこられました。今回、日本の省エネ技術を③エコソリューションとして伝える具体策として、「技術カスタマイズドリスト」を作成して海外の製鉄所省エネ診断を進めている記載があります。二国間連携を進める際に各国で応用でき、世界の鉄鋼業の低炭素化への実質的成果を期待します。

また水素社会への貢献はぜひ継続いただきたい。2020年オリンピック・パラリンピック東京大会では関連業界は燃料電池自動車・バスの大量導入を目指し、水素ステーション建設も一気に進むと考えられます。国の規制緩和議論も高まっており、その前提には高圧水素を安全に活用する高性能鋼材開発やさまざまな部品提供で社会の安全安心を広げる技術力が、大きく貢献すると考えます。北海道十勝の牧場で開始された、畜糞バイオガスを活用したCO2フリー水素を供給する水素ステーション建設など、意欲的なモデル事業もあり、定着を願っています。

なお、釜石の石炭火力発電所が国内最高レベルのバイオマス混焼率を達成。地元森林組合と連携して国内間伐材を使用するなどの取組みで、2016年度「新エネ大賞」経済産業大臣賞を受賞されたとのこと。CO2削減努力と国内資源活用による地元雇用の推進にもつながっており、持続可能な「地域循環共生圏」創出への貢献としても期待でき、地域での多面的成果の見える化・定量化も目指していただきたいと考えます。

循環型社会づくりに関しては、容器包装プラスチックの再資源化をしておられますが、近年は製品プラスチックを含めた再資源化を求める社会の声も高まっており、すでに実施されている廃タイヤの資源化など先進的な取組みは重要と考えます。また、環境リスクマネジメントとして、水俣条約対象施設外ながら鉄鋼業界が水銀対策を進めることが明記されています。自主的取組みながら、規制対象業種と同等のモニタリングを予定しておられるのは、社会との信頼構築に大いに貢献すると期待します。なお、2016年度の第三者意見でこの部分の記載を要望しており、PDCAサイクルを回していただいていることを評価いたします。

生物多様性に関しても「経団連生物多様性宣言」に参画し、率先して取り組んでこられた製鉄所敷地での「郷土の森づくり」や「海の森づくり」はすっかり定着しており、その継続性が重要と考えます。

社会性報告について

「鉄」はものづくりから都市基盤まで、くらしや社会に欠かせませんが、多様な新素材と比べ環境負荷の大きいイメージがありました。けれど巻頭部分で、製造・使用・廃棄、そして何度でも再生資源として活用できるライフサイクル全体で見ると高い環境性能がある、と具体的かつ定量的に示していただき、「鉄」の魅力を社会と共に活かし続ける覚悟と受け止めました。この社会性報告でも、多様なステークホルダーとのパートナーシップ、双方向のコミュニケーション重視を真っ先に挙げておられます。変化する時代の中で、地域社会との信頼、次世代育成、NGOとの連携、株主・投資家の理解など、変わらぬ信頼を継続・強化していただきたい。

環境マネジメント体制によるPDCAサイクルも的確に回しており、特に、重点目標を設定している30分野に関して、2016年度はすべて達成しています。

また働き方改革に社会全体で取り組んでいる今、従業員の健康づくりへの支援や、女性職員の産休復帰を支援する保育所設置体制など、毎年内容を深化させておられることに敬意を表し、今後も誇りを持って社員が働き続けられる持続可能な企業運営を心から期待しています。

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