第三者からのご意見

ジャーナリスト・環境カウンセラー  崎田裕子氏

環境経営の全体から

今回の「環境・社会報告書2018」に、「SDGsとともに」とサブタイトルがついていることが、持続可能な未来に貢献する明確な意志表示と受け止めました。

世界人口は70億人を超え、2050年には98億人に達すると予想されており、人間活動の増大がさまざまに影響し、気候変動、天然資源の枯渇、生物多様性の危機などの環境課題をはじめ、食料や教育、人権・労働など深刻な課題を生んでいます。

それだけでなく、トップメッセージに「社会や産業を取り巻く環境は大きく変化を続けている」とあり、IoTなどIT 技術革新によるSociety 5.0の実現や、特に国内では、少子高齢化・地域過疎化を払拭した地方創生が求められている現在、それらを「鉄を極め、鉄で社会に貢献する」と明言する姿勢に敬意を表します。

また、2018年3月に発表された「中期経営計画」において、「地域から地球規模に至る環境問題に積極的に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献する」と特に環境経営への軸足を表明しておられます。日本を支える基幹産業ながら、エネルギー多消費産業として常に最善の環境対策を追求してきた企業として、視点の確かさを評価いたします。

具体的に「鉄づくりを通じたイノベーションの歴史」を見ると、鉄が高度経済成長を支えた1960年代以降、利用企業の環境性能や安全対策強化への求めに対応した技術開発の歴史だったことに気づきます。

そして海外進出する需要家に合わせた国外での生産拠点整備を広げるなど、今では製鉄事業を中心に5分野で推進する事業の総売上高の35%は海外、65%は国内となっており、鉄で世界の持続可能性に貢献する経営基盤を固めているといえます。

この状況を2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」の17目標で見ると、経済、環境、社会性の観点からバランスよく取り組んでいます。今後、それぞれの国の中で、あるいは国内の大規模事業所毎に、個性と調和ある運営ができているか同様にチェックすると、地域への貢献状況がよりはっきりするのではないでしょうか。

資源効率性が重視される時代の中で、鉄は何度でも何にでも生まれ変わる、リサイクルに最適な素材であることを強調しておられます。このような視点と、最先端の鉄鋼製品の開発、例えば水素ステーションの高圧水素用ステンレス鋼の開発など、鉄の両面の意義をさらに追求していただきたいと考えます。

環境経営の具体策について

「中期環境経営計画」を3年毎に定めてPDCAを回し、エコプロセス、エコプロダクツ®、エコソリューションを通して世界に貢献する、この3つの視点と革新的な技術開発を推進する運営は安定感があり、長く継続していただきたい。

なお、世界の気候変動対策に向けたパリ協定で、日本は2030年にCO2を2013年度比26%削減する約束をしています。けれどこれは最終目標ではなく、2050年には80%削減を掲げており、これまでの取組みの積み上げで2030年目標は達成できても、2050年目標の達成は難しいと考えます。

エネルギー使用量が日本の約5%を占める企業として、鉄鋼生産の抜本的CO2排出量削減技術開発に向けて進める、「COURSE50」プロジェクトへの一層の挑戦を期待します。水素増幅されたコークス炉ガスを用いて鉄鉱石を還元する技術で鉄鋼生産プロセスのCO2削減を進め、CO2分離回収プロセスの高効率化や水素利用の可能性追求など、世界の鉄鋼業界の課題解決モデルを示していただくことを心から期待します。

循環型社会づくりに関しても、社内副産物の循環利用99%による社内ゼロエミッションの推進は素晴らしいと考えます。なお、脱プラスチックが世界的な課題となっていますが、容器包装だけでなく製品に関しても廃プラスチックの回収・資源化の徹底は重要であり、3R推進の中でケミカルリサイクルによるプラスチック原料への再資源化は、社会的にも重要な役割です。

また改正大気汚染防止法に対応して、自主的に水銀濃度の測定を行い、自主基準の達成状況を評価・公表するしくみを日本鉄鋼連盟の一員として整えるなど、化学物質リスクへの率先した対応を評価いたします。

生物多様性に関しても、製鉄所敷地で自然植生に合わせた「郷土の森づくり」を長年進めておられ、動植物など本来の自然再生の実績をあげています。近年は「海の森づくり」など、社会貢献を進める新たな取組みも実施され、ぜひ継続していただきたいと考えます。

社会性報告について

最後に、ステークホルダーエンゲージメントとしてあらゆるステークホルダーとの連携による社会との信頼の醸成は重要です。また、グローバル企業として、国籍、人種、宗教、性別、障がいの有無などによる差別の排除を進めておられますが、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を反映するなど、国際的な視点を踏まえて取り組んでいただきたいと考えます。

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