トップメッセージ

鉄づくりを通じてグローバルに社会を支えます




社長の進藤孝生です。

私たち新日鉄住金は、創業以来、鉄づくりを通じて社会を支えるという重要な役割を担い続けてきました。

そして、今、私たちの目指すところは、これまで以上にグローバルな視点で需要を捉え、収益を上げ、企業として成長を実現することで、総合力世界No.1の鉄鋼メーカーとしてのプレゼンスを揺るぎないものとすること、そして、鉄づくりを通じて社会を支えるという重要な役割を、よりグローバルなスケールで担っていくことです。

新日鉄住金は、私たちの持つ世界最高の技術とものづくりの力で、この目標の実現に向け、コミットしてまいります。

ここでは、その実現のためにとるべき戦略、対処すべき課題など、私たちが今考えていることについて、お話ししたいと思います。

事業の基本戦略について


技術、コスト、グローバルで自動車、資源エネルギー、インフラの戦略3分野に注力

当社は、高い技術力をベースに、世界で最適生産体制を構築し、商品競争力とコスト競争力を武器に、グローバルに事業を拡大させていくことを目指しています。「技術」「コスト」「グローバル」を軸に、注力する分野は「自動車」「資源エネルギー」「インフラ」です。中長期的な成長が見込めるこの戦略3分野の高級鋼マーケットを中心に、私たちはシェア拡大を目指しています。

国内製造基盤の強化と海外事業収益の拡大を進めます


2017年度を最終年度とする現行中期経営計画では、国内事業と海外事業を車の両輪として成長していくことを基本方針として掲げています。すなわち、技術先進性など競争力の源泉を育むマザーミルたる国内の製造基盤を強化するとともに、そこで培った力を武器に海外事業収益の拡大を図るべく、取り組んでいます。

国内は上工程のコスト競争力向上、技術開発力強化を進めます

マザーミルたる国内拠点は、上工程のさらなるコスト競争力の強化に向けて、技術力の向上に取り組んでまいります。世界の主要高炉メーカーのほとんどは、原料をブラジルやオーストラリア等に依存するという同じ競争条件下にあります。したがって、高炉、転炉、連続鋳造等の資本集約的な上工程の競争力は、地理的な条件よりも生産効率改善によるコスト競争力の向上にかかっています。このコスト競争力の向上を可能とするのは技術力であり、当社が国内に持つ上工程は、高い競争力を有しています。
現在、当社の国内の粗鋼生産能力は約5,000万トンありますが、経営統合以来、設備の集約を進めながらも、技術の力で生産性を高めることで粗鋼生産能力を維持し、コスト競争力を強化しています。具体的には、経営統合時から2020年度末までに、高炉は14基から12基、転炉は32基から28基、連続鋳造設備は30基から27基へとそれぞれ集約することとしています。

海外での下工程の生産能力を拡大しています

一方、鋼板の圧延設備など、上工程に比べると労働集約的な下工程は、固定費が相対的に小さいことから、市場の拡大機会が大きい新興国へのシフトを加速しています。国内の下工程は、経営統合時から現在までに、14の生産ラインを休止し、生産効率の高い設備への集約がすでに完了しています。一方、海外の下工程の総生産能力は2012年度末の900万トンから、足下は1,900万トンへと2倍以上の規模に拡大し、さらに子会社化した日新製鋼の海外生産能力を含めると2,100万トンとなります。今後も、需要の伸びが見込まれる海外での下工程の生産能力を拡大していきます。



当社を取り巻く事業環境とその対応について


中国の過剰能力の解消は着実に進捗、今後とも動向を注視

現下の世界鉄鋼業を取り巻く環境は、中国における過剰生産能力問題を抜きに語ることはできません。中国の過剰能力は、日本全体の年間粗鋼生産量の約4倍となる約4億トンともいわれています。昨年、G7やG20でこの過剰能力問題が取り上げられ、解決に向けた国際的な枠組みとしてグローバル・フォーラムが設立されました。また中国政府も2016年から2020年の5年間で、1.4億トンを削減すると発表し、自ら課題解決に向けて取り組みはじめました。すでに、2016年に6,500万トンを削減し、2017年には5,000万トンを削減すると公表しています。全面的な解決までにはいましばらく時間がかかると思われますが、着実に進捗しており、今後とも、その動向を注視してまいります。かつて先進各国も、経済の成熟に伴い、鉄鋼の生産能力を削減していくという歴史をたどってきました。鉄鋼業の未来のために、日本鉄鋼業界としても我々の過去の経験を中国鉄鋼業界に伝えることが、問題解決の一助となればと考えています。

原料価格変動への対応と、再生産可能なマージンの実現に向けて

もう一つの大きな課題は、原料価格変動への対応と、再生産可能なマージンの実現です。
2016年度下期は原料価格が高騰し、コストに与える影響は、当社の地道な経営努力で吸収できる範囲をはるかに超えるという状況になりました。私たちは、原料価格の製品価格への適正な反映をお客様にご理解いただくべく努力いたしました。
また、原料価格の反映とともに、再生産可能なマージンの実現についても、お客様にお願いしてまいります。高機能・高品質な鋼材を、安定的に供給するためには、設備の高齢化への対応、生産基盤の整備、人材育成等、設備と人の強化にしっかり取り組み、再生産可能な体制を築き、それを維持・向上していくことが必要です。また、ますます高度化するお客様のご要望に応えるための研究開発や、国内同様の高品質な鋼材をグローバルに供給するための海外拠点の整備も必要です。こうした取り組みをお客様にご理解頂くために、品質管理、安定生産、きめ細かなデリバリー管理、商品開発などで、ご要望にしっかり応えていくと同時に、たゆみないコスト改善、将来を見据えた技術開発等の自助努力にもこれまでにも増して真摯に取り組んでまいります。

一層の体質強化にむけて


国内では日新製鋼をグループに迎えました

このような厳しい事業環境下において、着実に将来の成長に向けた布石を打ってまいりました。
2017年3月、私たちは、日新製鋼の株式の51%の取得を完了し、同社を新たな仲間として新日鉄住金グループに迎えました。同社が検討している呉製鉄所第2高炉休止による固定費削減、その代替として予定している当社からの鋼片供給開始による稼働率の向上、操業技術、設備・保全等のベストプラクティスの共有、原料・資機材の調達コスト削減などで年間200億円以上のシナジー効果を見込んでいます。お互いの経営資源を持ち寄り、相乗効果の創出により、ともに競争力を高めていく所存です。

海外では重要拠点である伯ウジミナス社の競争力強化に向けた支援を続けています

海外では、昨年、持ち分法適用会社である伯ウジミナス社が10億レアル(約300億円)の増資を行い、当社は持分比率を上回る引き受けに応じました。ブラジルは2年連続マイナス成長で、製造業、中でも同社が最も得意とする自動車・造船分野等ハイエンドマーケットの不調が大きく、同社の業績は大きく落ち込みました。しかしながら、同社は増資に加え、経営環境の悪化にいち早く対応し、クバトン製鉄所の上工程休止による固定費圧縮や主要取引銀行との間での債務再編など、収益・財務体質改善に向けた取り組みを進めました。ブラジル経済は昨年に底打ちし、鋼材内需も回復する中、同社は国内を中心とした価格改善を進め、業績も目に見える形で改善してきております。IMFでは、2020年頃にはブラジル経済が2%程度の安定成長軌道に戻ると予測しており、南米随一の高い技術力でその市場において大きなプレゼンスを持つ同社は、今後とも、当社のグローバル戦略上の重要な拠点であり続けます。同社のガバナンスを巡っては主要株主間での意見の相違があり、執行体制の安定化が大きな課題ですが、当社としては、ガバナンス課題の早期解決を図るとともに、技術・人材面をはじめ、同社の競争力強化に向けた支援をこれまで同様続けてまいります。

中期経営計画の進捗状況について


2017年度を最終年度とする中期経営計画のKPIの達成状況についてご説明します。計画策定時よりも中国の過剰能力問題が早くに顕在化したことなど、事業環境の想定以上の悪化もあり、2016年度におけるROSは3.8%(2017年度目標値:10%以上)、ROEは4.6%(同:10%以上)、D/Eレシオは、0.71倍(同:約0.5倍)と目標に対してまだ大きな乖離がある状況です。しかし、直近の2016年度下期の数値を見ると、ROSは5.9%、ROEは8.6%と大きく改善しております。一方、資産圧縮については、最終年度を待たず、大幅な超過達成を実現いたしました。また、コスト改善(同:3年間を目途に年率1,500億円以上)につきましても、順調に進捗しており、2017年度で目標を達成すべく全力で取り組んでいます。
数値目標としては、満足できる状況ではありませんが、国内製造基盤の強化と海外事業収益の拡大の加速という当社中長期戦略のベースをぶらさずに推進していく所存です。

鉄の可能性を極限まで追求し他素材に対する優位性を維持します


当社には、持続的な成長のため取り組むべき課題があります。ここでは、その中の一つ、鉄の対他素材優位性の維持拡大に向けた取り組みについてお話ししたいと思います。
当社製品の中でも質、量ともに最も重要な位置を占める自動車に用いられる鋼材は、安全のための強度を確保しながら、環境負荷軽減のため、軽量であることが求められています。当社では、強度が高く、軽量でかつ加工性にも優れた、自動車用高張力鋼板(ハイテン)を提供していますが、各国地域の燃費規制の強化を背景に、近年、鉄よりも比重が小さく、比強度が高いアルミや炭素繊維、あるいは、これらを鉄と組み合わせたマルチマテリアルという選択肢が、鉄の代替として注目されています。しかし、自動車の環境に与える負荷は、走行による燃費のみならず、資源の採掘から輸送、素材の製造、部品製造、組立てや、廃車後の素材のリサイクルや廃棄など、自動車のライフサイクル全体で評価しなければなりません。このような評価手法をLCA(Life Cycle Assessment)といい、このような考え方をライフサイクルシンキング(Life Cycle Thinking)と呼んでいます。鉄は他素材に比べ、製造時の環境負荷が圧倒的に低く、リサイクル性に優れています。またコストの観点からも大きなアドバンテージがある素材です。さらに、自動車用ハイテンは、鉄の理論強度に対し、足下1割程度の強度しか実現できておらず、まだまだ大きな可能性を秘めた素材です。このように他に替え難い素材である鉄の可能性を、私たちは極限まで追求しなければならないと考えています。またこうした鉄のアドバンテージについて、多くの方々に認知していただくべく、広く発信していくことが重要であると考えています。

英知を結集し、環境問題に取り組んでいます


製造の過程でCO2を排出する鉄鋼業を生業とする当社にとって、CO2排出削減による地球温暖化防止など環境への対応は、責任を持って対処しなければならない課題です。日本の鉄鋼業は世界最高のエネルギー効率を誇り、その中で常に日本の鉄鋼業をリードしてきた私たちは、足下でも様々なCO2 削減に対する取り組みを進めています。当社では、製造プロセスの改良によるCO2削減はもとより、前述の自動車軽量化に寄与するハイテンの開発、高効率発電に寄与する電磁鋼板や高温高圧に耐えるボイラーチューブの開発など、製品を通じたCO2削減にも貢献しています。また、私たちが開発・実用化した環境・省エネ技術を世界に供与することを通じ、グローバルでの環境保全にも積極的に貢献しています。私たちは、これを、「つくるときからエコ(エコプロセス)」「つくるものがエコ(エコプロダクツ®)」「世界へひろげるエコ(エコソリューション)」の「3つのエコ」として推進しています。
当社がこうした取り組みを続ける中、2016年11月に発効したパリ協定を踏まえ、日本は、CO2排出量を2030年に2013年比で26%減とする目標を掲げています。また、長期的に目指すべき目標として、2050年には80%減とする構想を持っています。このような長期的な高い目標を達成するには、地球規模での戦略形成が不可欠であり、技術の点からも、次元の異なる様々な技術革新なくして実現は不可能と考えています。
現在、当社は、技術革新の一つとして、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受けCO2削減に資する環境調和型製鉄プロセス技術開発を主導し推進しています。これは、鉄鉱石を還元し鉄を製造する際に、部分的に石炭ではなく水素を使用すること等で、CO2の排出を抑制するプロセスを実現しようとするものです。2030年頃までに技術を確立し、経済合理性が成立することを前提に、2050年までの実用化・普及を目指し、研究開発を進めています。私たちは、持てる英知を結集し、こうした技術革新を長期的な視点で一つひとつ積み重ね、困難な課題の克服にチャレンジしていきます。

安全・防災活動を徹底します


2017年1月に発生した大分製鉄所厚板工場の火災では、近隣住民の皆様、お客様をはじめ、多くのステークホルダーの皆様に、ご迷惑とご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。生産影響と復旧費用で、2016・2017年度で合計約300億円の損失を見込んでいます。再発防止に徹底的に取り組むとともに、可能な限り影響を最小化すべく取り組んでまいります。
当社で働く人の安全確保はすべてに優先する最も大切な価値であり、日々の事業活動を行う上での基盤となるものです。当社は、2017年を「安全体質特別強化年」と位置付け、重大災害ゼロの実現を目指しています。過去の教訓を心に刻み、「安全上の課題が多い職場に対する重点支援」「本質安全化の加速」「繰り返し災害の撲滅」「安全に関する業務運営とその体制の整備・強化」「協力会社の安全レベル向上に資する施策の実行」の5つの柱で対策を講じ、これを徹底していく所存です。

ものづくりは人づくりから始まります


これまでお話してきた様々な取り組みを実現するのは「人」です。私は、ものづくりは人づくりから始まると考えています。社会・経済は常に変化し、その流れは速く、また、ビジネスのステージもグローバルへと広がっています。しかし、企業が持続的に成長していくためには、どのような時代にあっても軸をぶらさず、長期的な視点をもって人を育み、そして人が誇りを持って働くことができる環境を作ることが大切であり、それが私の大きな務めであると考えています。

技術とものづくりの力で社会に貢献します


私たち新日鉄住金は、創業以来、数々の大きな環境変化と対峙してきました。その度に問題を分析し、対策を立て、一丸となってそれを実行し、課題を解決するというプロセスを、愚直にそして熱意をもって取り組み、成長を持続してきました。自らの可能性を最大限に発揮し、安全・環境・防災・コンプライアンスを基本に、今よりももっと人々の生活を豊かにする技術・製品を生み出し、よりグローバルなステージで社会に貢献していくことを目指してまいります。

今後ともご支援のほど、よろしくお願いいたします。

新日鉄住金株式会社
代表取締役社長 進藤 孝生





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